屍病
「なんだよ。もしかして、芹川が海原を好きだったとか?」


なんでこんな落ち込んでいる時に、そんな話をしているのか。


桐山なりに場を明るくしようと思っているのかもしれないけど、大きなお世話だよ。


「私も真倫ちゃんほどじゃないけど、家が近いから。中学校に上がってからはあまり話さなくなったな。クラスも違ったし」


「お、おお。そうかよ」


なんだか妙に納得してくれたみたいだけど、桐山が考えているほど場の空気は変わらないよ。


皆、それどころじゃないというのがわかっているんだ。


「でもまあ、コンビニもスーパーもあるし、食い物には困らないだろ。生きることは出来る。だったら、そのうちいいことがあるって思うしかないんじゃね?」


「……桐山くん。この町がこんなになってから、どれくらいの時間が経ったと思う? お店の商品は補充も入れ替えもない。お弁当や食材は、今はまだ大丈夫にしてもいずれ腐敗し始める。冷凍食品や保存食で、私達はどれくらい耐えなければならないの?」


「そ、そう……なのか?」


未来さんに反論されて、ようやく事の重大さに気付いたのか、桐山が言葉に詰まる。
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