秘書清水が見た、冷徹社長の初恋
相手が教員なら、週末のスケジュールを空けるのも納得だ。
見学のことについては、確かに何年も前から同じ内容でやっている。指導要領の改定なんていう言葉を耳にしたけれど、うちの見学はそれに対応しているのかと、話題に上がったこともあるから、必要なことだ。

「カフェについては、少し時間をください。お相手が教員の方でしたら、依頼の方は……報酬は受け取れないでしょうから、依頼自体受けていただけるかどうか……受けたとしても、ボランティアになると思います」

そこまで考えが及んでいなかったのか、春日はヒュッと片方の眉を上げた。彼にしては珍しいことだ。

「ああ。確かにそうだな。相手は公務員だった。だが、見学の内容の見直しは、以前から話題に出ているから必要なことだ。そのためには、教育現場の意見は必須だ。聞いてみることにする」

それなら、もっとベテランの教員の方が……と思ったものの、人の恋路を邪魔する気はない。春日は明言しないが、〝喜ぶような〟と言うということは、そういう対象なのだろう。それにあの日、自分も彼女の対応を見ていて好感を持った。全てを知っているわけではないけれど、信頼のできる女性だと感じた。

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