秘書清水が見た、冷徹社長の初恋
「失礼ですが……参考までにお聞きします。取引関係ではないですよね?お相手の方のだいたいの年齢はわかりますか?」

「……」

珍しいことに、春日が言葉に詰まっている。内心、安心だと思っていたけれど……これはおもしろいことになりそうだ。

「さっきも言ったが、土曜日は完全にプライベートだ。仕事は関係ない……が、いずれ仕事につながるようにしたいと考えている」

なんとも回りくどい言い方だ。こんな言い回しをするなんて、かなり珍しい。
辛抱強く、彼が続きを話すのを待った。こちらの尋ねたことに対する回答は、まだ足りない。
春日もわかっていたようで、重い口を再び開いた。

「相手は20代の若い女性だ。もしかすると、これから週末のスケジュールを空けてもらう可能性もあるから、お前には伝えておく。
視察で会った、教員の町田絲さんだ。先日の忘れ物を届けに行ってくる。ついでに、仕事の依頼もしてくる。見学について、こちらももう少し勉強して、より充実したものにしていこうと思っている」

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