秘書清水が見た、冷徹社長の初恋
そして迎えた土曜日。
午前中に仕事をしていた春日だが、その様子はこれまで見たことのないものだった。いや、他の社員から見たらいつもとなんら変わりなかっただろう。しかし、付き合いの長い自分からしたら、彼は……浮かれていた。というより、めちゃくちゃ浮かれていた。それほどまでに、あの女性に会えることを楽しみにしているということなのだろう。

「社長」

「なんだ、清水」

「くれぐれも、セクハラで訴えられることのないように、お気を付けください」

「はっ?何を言っている」

一瞬、余裕のない声を出したものの、すぐに普段の自分を取りもどしたようだ。

「言葉のままですよ。昨日に増して、今日のあなたは浮かれているようです。私の目にはわかります。それもそのはず。意中のお相手に会えるのですから」

彼は鋭い睨みを向けてくるも、話を聞くことに決めたようで、口を閉ざしていた。

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