秘書清水が見た、冷徹社長の初恋
春日の秘書になって数年経った頃、彼の突然の思いつきで、自社の工場を視察することになった。彼は時間が空くと、フットワーク軽く自ら足をはこんで、現場を見るようにしていた。
秘書として、イレギュラーな外出は遠慮して欲しいところだが、彼のこういう姿勢は人として素晴らしいと思う。

ただ……現場の人間には悪いなと苦笑する。
春日は決して間違ったことや無駄なことは言わない。それは社員にも伝わっている。ただ、常に厳しい表情を崩さない彼は、冷徹社長と恐れられ、社員を必要以上に緊張させてしまう。

早速、訪問先に連絡を入れると、案の定、相手からは戸惑いが伝わってくる。

「今日は、小学生の社会科見学が入っているので、対応できない社員もいますが……」

春日に伝えると、それも仕事だからと、見学の様子も視察を希望した。


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