探偵I(タンテイアイ)【第2巻】
しかし、泰平は紗永の優しさに慣れ始めた頃に何か物足りなさを感じ刺激を求めに内緒で上司や同期に誘われる度に夜のクラブの町に消えることが度々あった。
次第にクラブ通いが楽しくなり回数がどんどんと増えていき、お金に少し困った頃、泰平の頭の中にキラッと紗永の顔が浮かんだ。
『母親が病気になったんだ。現金が今すぐに必要で。今、俺が頼れるのは紗永だけなんだ。……すぐに返すから──』
泰平は紗永に母親が病気になったと嘘をつき、そして紗永から二百万円の現金を手にした。
紗永が泰平に渡した二百万円は昔から少しずつ貯めていたもので、将来いつか両親を海外旅行に連れて行ってあげようと思って貯めていたものだった。
泰平がアルバムを段ボールにしまい次に小さな写真立てを手に取った。
両親に間を挟まれるように五歳ぐらいの二つぐくりの紗永がにっこりと笑っている。
何か胸の奥から込み上げてくる感情を抑えながら段ボールにしまう。
仕事、これは仕事なんだ、俺はただ部屋を片付けに来たんだ……、と泰平は自分に強く言い聞かせる。