お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》


『ーーお嬢様』


この時。ルシアが誰のことを考えていたのか、ダンレッドは気づいていた。
しかし、もう、彼女の前でその名を口にすることはない。
気持ちを封じ、ここに立つ彼女の未練が込められた願いに気づかないふりをして、ダンレッドは静かに笑ったのだ。


「うん。分かった。俺は、この先ずっと、お嬢さんの知ってる雇われ用心棒のままでいるよ。俺は、二人の赤い糸だから」

「赤い糸…?」

「ははっ!こっちの話〜。」


別れの挨拶もなく姿を消した相棒。

彼の代わりにあの人の残した最愛のお嬢様の居場所を守っていけるのは、俺だけだ。


そしていつか…。

俺の知る中で一番だと言い切れるほど、最高にカッコよくて、最強の相棒だったあの人にまた会えたら言ってやる。

俺が彼女の側にいる限り、あんたと彼女の繋がりがなくなることはないよ、ってね。


きっと、メルは、今もどこかで彼女の幸せを願っているんだ。
人には決して見せない深い傷を抱きしめて、禁忌の温もりの記憶をパンドラの箱に押し込めて。

それでも。
“俺がお嬢さんの側にいると知っているから”。
彼女の手を取らずに消えたんだ。


守ってやるよ。

それで、この国で、のし上がってやる。
あんたが俺を必要とした時に、今度こそ全てを救ってやれるように。あんたの守りたいものを、ちゃんと、取りこぼさずにいられるように。

そしたら、また。
きっと、また。

俺たちの道は交わるはずだから。


(そうでしょう?メル……)


サァッ…!と、優しい風が吹き抜ける。

穏やかな日差しがティアラを照らし、未来を見据えた薔薇色の瞳が、ふっ、と曇りない青空を映したのだった。




ー完ー
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