涙は海に捨てて〜さよなら、大好きだった人〜
カヤが料理を運んできた。まるで芸術品のような美しい料理の数々に、テレサは見とれてしまう。

「うまそうだ」

セダは微笑み、アイザックがお茶を配る。そしてみんなで挨拶をして食べ始めた。

賑やかな船の上は、食事が始まるともっと賑やかになる。テレサはみんなの笑顔を見て、取り引きをどうするか決めた。



セダと再開してから六ヶ月。グレンに取り引きを持ちかけられて五ヶ月。テレサは覚悟を決め、グレンの船に向かった。

「決断したみたいだな」

船の前にグレンは立っていた。そして、中に入るように言う。

「話くらいここでできるだろ」

「せっかくの客人だ。茶くらいは出す」

グレンの目には、逆らうことを許さない強い何かが宿っていた。テレサは渋々船の中へ入る。完全に、敵の手中に入り込んだのだ。テレサの胸が緊張し始める。

船長室に向かう間、船員たちとすれ違ったが、以前のように馬鹿にされたりはしなかった。テレサは不思議に思いながらグレンの後に続く。
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