ナナ
私は顔を抱きとめてくれた男の胸に埋めるように後頭部を抑えられながら移動する。



銃声もだいぶ聞こえなくなった時ようやく恐る恐る顔を上げることが出来た。



「大丈夫か?」


「・・・えぇ。」


「家まで送る。乗れ。」



問答無用で車に乗せられる。



「家は?」


「帰りたくない。どこかのホテルに置いて。」



ホテルに連れ込まれそうになったことよりもそのあとの銃声の方が恐怖が色濃く残った。



家に一人でいるなんて無理。



従業員がいるホテルの方が安心出来る。



「お前、さっきホテルに連れ込まれそうになってたんじゃねぇのかよ。」


「誰かいないと不安なの。家で一人でいるよりマシ。」



夜の世界では当たり前。



こんなことは当たり前。



自分でそう言い聞かせる。



「冬夜、俺の家まで送れ。」



隣に乗ってる男が運転手に声をかけた。



「若、大丈夫なんですか?」


「あぁ、問題ない。おいお前。」


「・・・何。」


「お前を1日だけ俺の家に泊めてやる。無駄な金が浮く必要はなくなり人と一緒にいたいというお前の要望も叶えられる。どうする。」


「・・・構わないわ。あなたが良ければ。」


「今日は疲れてるんだ。一刻も早く家に帰りたい。」
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