rain
寿人さんのほっぺたに手を当てて


勢いのままその唇を奪えば

寿人さんは大きく目を見開いて



「私だって…大好きなんですから」


「…」


強気な口調とは裏腹に
浮かべてる表情はきっと
困り果てたような赤面だろう


鏡なんて見なくても分かる


それでも目を逸らさず
挑むように寿人さんを見る




「………困ったな」



放心してた寿人さんがぽつりと呟く



「そんなことされたら
そんな可愛いこと言われたら
俺、いろはのこともっと離したくなくなる」



落ち着いた声とは対照的に
段々赤く染まっていく目の前の顔



喜ぶような、困ったような


照れたような、嬉しそうな




そんな寿人さんが





たまらなく愛しく思えて





「…じゃあ離さないでください」



ぎゅうっとその首に手をまわして
しがみつくように抱きつけば



「……ほんとに、困ったな」



寿人さんのそんな声


本当に困り果てたような声だったけど




でも






浮かんでいたのは幸せそうな笑顔だった
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