時は巡りて君は舞う
住処の無い僕
降りしきる雨に打たれ、僕はその場で踞る。僕は、家族に捨てられた。帰る家もないし、食べるものもない。

「……何で泣いているんですか?」

声をかけられ、僕は顔を上げる。ふわふわとした、僕と同じ黒髪が印象の男子だ。

「泣いてなんかいません」

「涙声になってますよ?」

僕は、顔を背けた。まだ男の子は、どこかへと行く気配がない。

「……こんな天気だ。こんな所にいたら風邪引きますよ?」

「放っておいて」

「放っておけません」

強引に僕を立たせ、歩き始める。正直、嬉しかった。僕を気にかけてくれたことが。

僕は、そのまま連れられて『221B』と書かれた部屋に入った。中は、本だらけ。

「……少し待ってろ」

そう言って、男の子はどこかへと行く。僕は、懐かしさに胸を押えた。

しばらく待っていると、男の子はタオルと服を持ってくる。

「少し大きいと思うけど、我慢してください」

「……どうして」

僕は、男の子を見上げて呟いた。男の子は、不思議そうな顔で僕を見る。

「どうして、僕なんかにそんなに良くしてくれるの?」

「……俺は、昔お前を頼っていた。だからだ」
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