雨のリフレイン
「…あのな。
俺のためならなんでもするとか。
男の前で、そんな事を、そんな顔で言うんじゃない。我慢できなくなるぞ」
「我慢?」


聞き返した柊子の唇が水上の唇によっておもむろに塞がれる。
息もつけないほどの激しいキス。


「せ、せんせ?」
「俺の望みは何かと言ったな?何でもするんだな?
勉強に集中しなきゃならないから、卒業まで待つつもりだったけど。
…柊子、煽ったな」


やっと離れた唇。息も出来ないほどのキス。
膝に力が入らなくなって、柊子は水上にしがみついた。

そもそもいつもクールで大人な水上が、柊子に煽られるとか、ありえない。
ありえないけど、今の激しいキスに、少しだけ期待してしまう。


「言っておくけど。一度堤防が崩れれば、もう我慢はしない。
それなりの覚悟はあるんだな?」
「どういう意味?
先生が望むことならどんなことでもする覚悟?」


そんな覚悟ならいらない。
大好きな水上の望むことなら、何でもする。
プロポーズの時に、一般的な結婚生活は求めないと。子供も要らないと言われて、諦めていた。
だけれど、ただ一度でいい。

もしかしたら、彼が柊子を求めてくれるかもと、膨らむ期待に胸が高鳴る。

たとえ、体の相性が悪かったと離婚を求められても、大好きな水上に抱かれたかった。
彼に柊子の『初めての男』になって欲しかった。


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