雨のリフレイン
あまりに痛々しい彼女の姿に、水上は、ポンとその肩に手を置いた。


「ごめん。
君は何もわかってないと、勘違いしていた。
君は、強い子だったんだね。
でも、今は、ここには俺しかいない。
通りすがりの俺に気をつかう必要なんてない。
我慢はいらない」


みるみる柊子の笑顔が歪んでいく。


「どうして、そんなこと言うの、先生。
…甘えたくなるじゃない」


柊子は、そっと水上の白衣に触れた。
パリッと糊がかかった白衣の硬い生地をキュッと掴む。

途端に、涙がポロポロとこぼれ、我慢しても嗚咽が漏れてしまう。


「雨が強くて、雨音しか聞こえないな。
傘を忘れたから濡れるし…」


「…優しいんですね、先生。
水上洸平(みずかみ こうへい)先生。
…ありがとう」

柊子は水上の胸ポケットに下がっている名札で彼のフルネームを知る。


そのポケットの中から、突然電話の呼び出し音がした。


「はい、水上です。
…すぐに行きます」


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