雨のリフレイン
香織がよろけて洸平の白衣の袖を掴む。
洸平は、サッと香織の体を支え、そのまま歩いて行ってしまった。

「おい、あれ、どーみても付き合ってるじゃん。
三浦、妊娠でもしたんじゃね?」

「もう圭太!適当なこと言わないで。
柊子、圭太なんていい加減なことしか言わないから気にしないで」

「八坂も目を覚ますいい機会だよ。
どんなに憧れたって、あんな優秀な医者が看護学生なんて相手にするもんか。お似合いじゃん、あの二人」

圭太の言葉が胸にささった。
柊子の顔から血の気が引く。足元がふらついて思わず愛美にしがみつく。

「柊子、大丈夫?」

柊子が側にいてくれることが幸せだから、俺を信じろと言ってくれた。
あの雨の日からろくに顔も合わせていないけど。
あんな様子を見てしまって、何を信じたらいいのだろう。家族だということ?それとも、戸籍上の関係のこと?


ーーねぇ、洸平さんが好きなのは…誰?


「…大丈夫。びっくりしただけ。
さぁ、行こう!サボってるって怒られちゃう」


一つ大きく息を吸って、今見た映像を頭から掻き消していつものように、元気よく歩き出す。

だけど、柊子の胸は不安に震え、棘が刺さっているような痛みを感じていた。





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