雨のリフレイン
「うぅ…よかった…看護師さんがいたなんて…」

うめき声が、安堵の声に変わる。



柊子は、自分の座っていた席の近くの乗客から、一人ずつ声をかけた。


「…どこか、痛いところはありますか?」


柊子の声は緊張でわずかに震えていた。だが、懸命に笑顔を浮かべて話しかけた。


「…。
今は、頭が痛くて。
血圧の薬をいつも飲んでるわ」


柊子は、手にした手帳にメモをする。
意識があり、自分で動けそうな人には、メモした手帳のページをちぎって渡した。

会話をするうちに、緊張も不安も己の痛みも忘れ、仕事の時のように自然と体が動くようになっていった。


「救急隊員の方に渡して下さいね」

「あなた…この紙…
それに、あなたも頭から血が…」

手渡された紙を見た女性は、その紙が特別なものだと気づく。

「大丈夫。
すぐに、助かります。一緒にあと少し、頑張りましょう」

柊子は自然とこぼれた優しい笑みを浮かべ、他の席に移動する。



一番の重傷は運転手で、意識がない。



「救急車の音だ!」



乗客の誰かが、ホッとしたように叫ぶ。
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