雨のリフレイン

柊子は、産婦人科でもらったエコー写真をバックから取り出した。


「ウフフ、落花生みたい。
でも、ちゃんと心臓動いてたでしょ。生きてるんだよ」
「…そうだね。生きてるんだよね。
お父さんは、ある日急に失った命。お母さんも辛い思いしてつないでいる命。
この子もおんなじ命を持ってるんだね」


どうしようと、不安ばかりが募っていた。
正直、要らないとも思ってしまった。
だけど。ここに確かな命があって、生きている。
この子は、生きたいと懸命に心臓を動かしている。
このままというわけにはいかない。
もう一度、洸平とちゃんと顔を合わせて、キチンと話をする。
この命の半分は、彼からもらったものだから。


柊子は、自分の携帯電話を取り出した。


ーーもう一度だけ、会ってもらえませんか。話をさせて下さい。


洸平に、メッセージを送った。
しばらくして既読はついたが、返信は結局来なかった。


返信がないことで、にわかについた勇気が萎んでいく。そもそも、洸平は子供は要らないと言っていたのだ。柊子の妊娠など、困惑しかないだろう。

「少し、落ち着いてみるのも、いいかもしれないわね。柊子自身、実感もないだろうし、突然のことでビックリしているでしょ?洸平くんに話が出来るくらい落ち着いてからでもいいと思うわ」
「そう、だね。
うん。ちょっと冷静になるわ。洸平さんに何て言って伝えるか、考えてみる」






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