雨のリフレイン
「お願いします!
所持品に光英大学病院の身分証が。看護師さんです。
名前は、八坂柊子さん。先程まで我々のサポートをしてくださっていたのですが…」

救急車からストレッチャーで運ばれてきた柊子に、救急外来部長は目を見開いて叫んだ。


「し、柊子ちゃん!?」


「先生?お知り合いですか?」
「お知り合いも何も。
え、え、じゃあ、この母子手帳のメモって…。
…チッ。だれか、洸平呼んできて」

部長の指示に、側にいた看護師が大きく首を横に振る。

「水上先生は、最初に運ばれてきた重傷者の手術中ですが…」
「そっち、誰か代わって。外来の先生でもいいから、呼んでこい」

「でも…」
「グズグズするな!彼女、洸平の嫁さんだ。このメモを書いた本人だ。この紙の意味は、君が教えてくれたじゃないか!!」

普段、滅多に声を荒げたりしない、いい意味で肩の力が入っていない、光英大学附属横浜新医療センター救急外来部長、一条翔太が初めて怒鳴った。

看護師が飛び上がる。怯えた彼女の目を見て、翔太は我に返った。

「あぁ、すまない。俺が行く。オペ代わってくるから」




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