雨のリフレイン
その時、不意に柊子のポケットに入れていた携帯電話が震えた。
メッセージが届いている。

『今日、研修で翔太が来てる。今夜はうちに泊まる』

友人に見られないように、サッと目を通した。

ーーこれは、気をつけないと、お母さん張り切っちゃうな。

と、思いつつ、久しぶりに翔太に会えるかもしれないことが嬉しい。

「柊子?どうかした?」
「ううん。なんでもない」

柊子は携帯を再びポケットにしまって、食べ終わった弁当を片付ける。


「ねー、愛美。この間の医学生との合コンどうだった?」
「とりあえず、一人、連絡先交換したよ。
付き合うかはわかんない」


恋の話が始まれば、柊子はもっぱら聞き役だ。


同級生達は、みんな彼氏がいる。
勉強の合間にデートしていたり、合コンで新しい出会いがあったり。
楽しそうで、ちょっと羨ましい。


「柊子も、水上先生は諦めてもっと手の届く相手を探そうよ。柊子なら、絶対モテるのに。
なんなら、紹介しようか?」

同級生の一人が柊子に気を使って言ってくれる。

「私?ムリムリ。モテないし。それに、余裕ないもん。お母さん、病気だし。
三浦先生に睨まれない程度に、水上先生を見つめるくらいで、充分」

柊子はそう言って、空の弁当箱を持って立ち上がった。

「さてと。午後も頑張ろ」






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