凪いだ青を待ってる
「あ…、あなた…。ちさきさん…?」
「えっ、」
「…っ笹森ちさきさんですか…?」
女の子としっかり手をつなぎながらそう話したのは、優しそうな雰囲気を纏った若い女性だった。
20代前半とみてとれて、仕事帰りのようでスカートスーツに身を包んでいる。
胸についている名札を目で盗み見ると
……藤、枝。……ふじえだ…、
「っ青葉先輩の…!?」
「やっぱり!!あかり、よくやったっ!」
「あーちゃん!あかりえらい子!」
ふたりは嬉しそうにハイタッチをしている。…でも、どうしてわたしの名前を…。
「…あおちゃんね、そのミサンガぎゅってして、毎日ないてるの」
「…っ!」
「…あかり…。………青葉に会いに隼人くんや理央くんが来てくれてたのも、本当は分かってるの。…ごめんねって伝えてください」
「っ、あの、青葉先輩は…今どこで何を…?わたしたちでも会うことは出来ますか…?」
「………。変わらず入院してるんだけど、……本当にごめんなさい」
「……そうですか…っ」
「あーちゃんでんわ教えなよ!えっとね090、」
「っ!?」
「あー、こらっ!ほんっとにもう…」