恋叶うオフィス
いきなり立ったからなのか、まだ熱があるせいなのか、武藤はよろけた。その体を支えるのに間に合わなく、ふたり共にバランスを崩して、床に転がる。

私、押し倒されている……と覆い被さる彼の重みを感じた。

ううん、違う、違う。転んだだけ……。

武藤の体を離そうと彼の肩に手をかける。

しかし、武藤は私から離れようとしないで、私の背中に手を回して、抱き寄せた。床で抱き合うのは、おかしな図になっているような気がするし、ちょっと体が痛い。


「夢じゃなくて、良かった」

「良かったの?」

「うん……」

「渡瀬とのキス、好き」


武藤はとんでもないことを口走って、私の首に顔をうずめた。そんな武藤の頭に手を触れる。

好きなのはキスで、私ではない?と、一瞬思ったけど、武藤が何を好きでもいい。

私は武藤が好きだから、抱きつく彼が愛しくてたまらない。

大好きだよ、武藤……。
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