恋叶うオフィス
「言い忘れていました。おめでとうございます」

「あー、うん。ありがとう」


にっこりと笑う彼女に私は、はにかむ。おめでたいのかよくわからないし、おめでとうと言われるのは照れくさい。

私があとを追ってこないからと、武藤と宇野くんが廊下で待っていた。武藤が心配そうな声を出す。


「なにかあった? 大丈夫」

「大丈夫じゃないけど、大丈夫」

「それ、どういう意味?」

「さあ?」


眉根を寄せる武藤がおかしくなって、クスッと笑う。武藤も気が抜けたように笑った。

笑い合う私たちに宇野くんが苦々しい顔する。


「幸せようでなにより」


嫌みっぽく言われたのに、私たちはまた顔を見合わせて、照れた。


金曜日、退社時刻になって、我先にと百々子ちゃんがバッグを持って立ち上がる。


「お先に失礼します!」

「このまま行くの? 楽しんできてね」

「はい! 渡瀬さんも楽しい週末を過ごしてくださいねー」


週末は彼氏と温泉旅行に行くと、先週から百々子ちゃんは浮かれていた。一緒に暮らしているとなかなか旅行に行く機会がないから、楽しみだと何度も言っていた。
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