恋叶うオフィス
彼もこんなところに私がいると思っていなかったようで、驚いた顔をする。


「武藤、お疲れさま。車で出ていたの?」

「うん、郊外のショップに行ったからね。渡瀬は、ごみ捨て?」

「そう。もう帰れる?」

「ちょっとだけ片付けるから待っていてくれる?」


私が頷くと、彼は私の肩に手を置いた。


「やっとふたりで過ごせるね」

「うん。実は楽しみで昨夜なかなか眠れなくて」

「なにそれ。渡瀬、かわいい」

「えっ? 」


今のどこにかわいいと言われる部分があった?

目を見開く私に武藤は顔を寄せる。


「今夜は長くなるけど、がんばって起きてね」

「えっ、長く? えっ? えっ、あっ……」

「ほんとかわいい」


ふたりだけのエレベーター内で、武藤は軽くキスをした。私の顔は瞬時に沸騰する。


「もう、こんなところで」

「かわいい顔するから、つい。嫌だった?」

楽しそうに笑う彼に胸がキュンとなる。


「嫌じゃない」

「良かった」


私だけがドキドキしているようで、ちょっとムカつくけど、キスは単純にうれしい。
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