恋叶うオフィス
一応用意している答えはあるけど、宇野くんがなにを言ったら納得してくれるか分からないし、宇野くんがどう答えるかも分からない。

断った時の反応によって、私の答えも変わる。だから、今ハッキリとこう答えるとは言えない。


「いや、宇野がどう答えるかによってだよな。まあ、確かにちゃんと話せば分かってくれるヤツかな……。もし、なにかあれば呼んでよ。すぐ行くから」

「呼ぶ? 武藤を?」

「うん。この辺りで会うんだろ? 俺、オフィスで仕事して待っている。なにもなかったなら、無事終わったと連絡くれればいいから」

「武藤って、そんなに心配性だったっけ?」


以前からいろいろと心配してくれるけど、ちょっと過保護に聞こえてしまったから、苦笑いする。


「渡瀬は大事だから、見守りたいんだよ」

「えっ、私大事にされているの?」

「もちろん。友達だけど、渡瀬はほら、女だから……俺なりに守りたいんだよ」


武藤から初めて聞く『守りたい』の言葉に、私は目を丸くした。武藤は自分で言って、恥ずかしくなったのか、視線を窓の外に向ける。ほんのり頬が赤くなっていた。
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