華麗なる人生に暗雲はつきもの
仁と楽しげにしている姿を見ると、つい傷つけたくなって。
俺のことなんて見向きもしてくれないようで、自分を見て欲しくて言っていた。
それでも、大事にしているから良いと思ってたけど。
「わかったか。今のはダイジェスト版だ。一晩で語り尽くせないから大分省略した。今後、小春に近づくなよ」
「俺はまだ……」
「クソガキ。お前の言葉なんぞ聞きたくもない。あんなとんでもなく可愛い子と数年付き合えただけでもありがたく思え。一生分どころか来世の運も使い尽くしたぞ」
「ちょ、ちょっと仁。落ち着いて……」
「落ち着けるか!春の妖精と発情期の猿がつり合うと思うか?身の程知らずにもほどがある!」
「………………」
「妖精と猿って……小春さんも俊君も人間だよ」
「いいや、こいつは人間の形をした発情期の猿だ。騙されるな。佳苗」
仁はようやく自分の手にグラスから飛び散った酒がかかっていることに気付き、手を拭く。
「俺と小春のせいにして、自分を顧みることがなかった。だから振られたんだ。どれだけ勘違いした猿か少しはわかったか。佳苗、もう俺は寝る」
苛立たしげに席を立つ仁に俺は何も言えなかった。
ただ、俯いて仁に言われたことを思い返すことしか出来なかった。