華麗なる人生に暗雲はつきもの
「相変わらず、小春に引っ付いて目障りなやつ」
あかりとじゃれついているのを僻んでいるのか性悪なことを言う仁。
というより、こいつは根っこから性悪だから関係ないか。
「恋人の実家に遊びに来て何が悪い?水野にお前はすでに用無しなんだ。いい加減気付け。嫉妬は醜いぞ」
「お前の目は節穴だな。俺とお前とじゃ、同じ土俵にさえ立ってないさ」
ふっ、とおかしそうに笑う仁。
「仁くん!あのね……」
出迎えた後すぐにキッチンに走っていった水野がまたぱたぱたと戻ってくる。
「これ!仁くん、この間お店で食べて、おいしいって言ってたでしょ?榊田君に教えてもらって作ったんだよ。なかなか、上手く作れなかったんだけど、ようやく仁くんに食べてもらえるものが作れて!」
水野は頬を紅潮させながら、仁に皿を差し出す。
「………………」
「ああ!この間、二人で食べに行った店でのか。わざわざ作ってくれたのか、俺のために」
「うん!仁くんがおいしいって言ってたから、喜んで欲しくて。やっぱりお店みたいにはできなかったけど」
「………………」
俺にこの料理を教えて欲しいと、本を差し出してきたのは先日。
頼られるのは嬉しくて、自分一人で作ってみて、水野に教えられるように練習した。
そう、水野の笑顔が見たくて。
そんな俺に、すごい!とぴょんぴょん跳ねてとびっきりの笑顔を俺へと向けてくれた。
記憶に新しい。