華麗なる人生に暗雲はつきもの




「仁くん!おかえり!」



 水野は仁レーダーが発動し、サンダルで玄関を飛び出した。


 疫病神め、また来たか。


 そう思いつつも、俺はおじさんから義理の息子になることを許されたことで少し寛大になれた。


 それに……



「しゅんくんっ!!」



 あかりが俺の足にしがみ付く。



「あかり。また大きくなったな」



 そのまま抱きかかえるとぎゅっとしがみ付く紅葉のような手がかなり可愛い。


 というか、あかりは疫病神仁の娘とは思えぬほど、可愛い。



 母親である佳苗に似たからだろうか。


 プラスして俺と水野が名付け親だし。


 あかりは生まれた当初から俺にべったりで、もうすぐ四歳になる今では、さらにべったりになった。


 それは嬉しいのだが、俺の彼女である水野にヤキモチを焼いて、昨年くらいまで頭を悩ませていた。


 水野の寂しそうな顔を見るのが俺も仁も忍びなくて、あかりに言い聞かせようとするのだが。


 小さくても女の子、恋敵は許せないらしい。


 水野はその気持ちが痛いほどわかるから、と苦笑いしていたがやはり忍びない。


 でも、水野が自分で解決し今では懐いて、あかりは三人で過ごすことも喜ぶようになった。


 仁が家事を頑張っている佳苗の労いの意味で、月に一度二人で出かけるから、その間俺たちが預かるというわけだ。


 三人で出かければ親子に間違われるのも気分が良く、将来の予行練習も兼ねられ、あかりは可愛いしで、双方に良いこと尽くめ。



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