華麗なる人生に暗雲はつきもの
「しゅんくん、こはるちゃんとけんかしたの?」
無邪気なあかりに苦笑いが込み上げる。
「喧嘩じゃない。俺が嫌われるようなことしたんだ」
「こはるちゃんにきらわれちゃったの?」
仁譲りの薄茶色の瞳で俺を見上げてくるあかり。
今日はまさに疫病神の娘か。
子供の無邪気さにさえ、胸をえぐられる。
「……そうだな。きっと、俺の顔なんて見たくないくらい嫌われただろうな」
昨日、仁に返された指輪はそのままテーブルの上に置かれたまま。
佳苗が泥を拭いてくれたけど、やっぱりうっすらと箱は汚れている。
俺は何故だか触れることができなかった。
水野に絶対に合うと思った。
宮野が推したのもあったが、これだと思った。
女に選ばせた指輪を持ってプロポーズした俺に水野は失望しただろうか?
もしかしたら、これが結婚を躊躇うきっかけだったのかもしれない。
そのダメ押しが昨日。
全てを水野と仁のせいにして、自分を顧みなかった結果だ。
傲慢、と仁は言ったが、きっとその通りなのだろう。