華麗なる人生に暗雲はつきもの
「…………ということは、あんたの恋人って、仁の可愛い可愛い小春?」
言葉はいらなかった。
仁はこのことを知っている?
「…………ということは、榊田が小春を誑かす、世界一捻くれたクソガキ?」
……知っていたようだ。
俺の知らぬところでも性悪は発揮されている。
「ね……私、何だか懐かしい過去が蘇って来たわ。明美って、もしかして」
「ああ。苗字が確か榊田だったような……」
あまりの偶然を疑わしく思いながらも、確信に満ちた目で俺を見る。
「……俺の姉貴ですね。どうして二人は、今まで気付かなかったのかが不思議です」
世間は狭い。
これほど、世間は狭く暑苦しいものなのか。
この繋がりを仁だけが気付いていた。
「小春と明美の名前は覚えていても苗字なんかで呼ばないからピンと来ないさ。それに十年も前の話だぞ?」
「仁のやつは、榊田のこと知ってたからあんたの話を聞きたがってわけか。あいつ、さりげなく聞き出すの上手いからついつい話しちゃうのよね。確かに私の後輩の話にやけに興味持つな、とは思ってたけど」
そこで肩がぴくりと動いた。
仁は宮野たちを使って俺を監視していたのだ。