華麗なる人生に暗雲はつきもの



 自分から臭うアルコールが身体に回り気持ち悪くなる。


 水野に知られたら、嘘を吐いたなんて知られたら。


 姉貴の友人と、水野を好きと言いながら関係を持ったなんて知られたら。


 どんどん気持ち悪くなり、強い吐き気に身体を埋めた。


 気持ち悪い。



「おい、榊田、大丈夫か?」



 気持ち悪い。


 絶えられなくなり、肩に触れようとする高杉さんを振り払いトイレへと駆け込んだ。







 何度かの嘔吐で吐き気が収まりトイレのドアを開けると視界に鏡を捉えた。


 鏡に映った自分の顔は青白く頬がこけていて、自分の顔など、ここのところまともに見なかったなと、ふと思う。


 慣れたと思ったのに、淡々と何も考えなければ平気だと思っていたのに、鏡に映る俺はとことん情けなく、死人のような姿だった。












「あんた、意外とデリケートなのね。悪かったわね。変な話して、忘れなさい」



「いいえ。聞かせてください。初対面から俺のことをあからさまに嫌っていた理由がわかりました」



「まぁ、お前は聞いておいたほうが良いかもな。だが、本当に平気か?体調が悪いんだろ?」



 高杉さんの言葉に神妙に頷き、続きを請う。



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