華麗なる人生に暗雲はつきもの
キッチンから緑茶を持って来た美玖は姉貴の隣に腰を下ろす。
話に加わる大勢だ。
本来ならば野次馬は追い出すが美玖は水野と親しい、役に立つ可能性はある。
そうでなくても、美玖は指輪のサイズを聞いた際に、水野に義姉になって欲しいと協力的だったし。
「師匠は可愛い明美のためだ。馬鹿な弟にもチャンスは与える。条件として、我々の関係は黙っておくことだと言われた」
仁は自らだけではなく、俺を見極めるため姉貴、そして宮野や高杉さんを使っていたわけだ。
そういう意味では仁が心配するような浮ついた態度などなかった……
付き合う前のあの一回を除いては。
姉貴は知っているのだろうか。
知っていたとしても伝えないはずだ、俺と水野の交際を応援しているならば。
「幼馴染の君の心配も当然だよね。相手がお兄ちゃんなんて」
平安時代の登場人物かのようなネーミングで仁のことを出して、美玖はしたり顔で頷く。