華麗なる人生に暗雲はつきもの
「師匠は可愛い明美のためだ。馬鹿な弟にもチャンスは与える。条件として、我々の関係は黙っておくことだと言われた」
仁は自らだけではなく、俺を見極めるため姉貴、そして宮野や高杉さんを使っていたわけだ。
そういう意味では仁が心配するような浮ついた態度などなかった……
付き合う前のあの一回を除いては。
姉貴は知っているのだろうか。
知っていたとしても伝えないはずだ、俺と水野の交際を応援しているならば。
「幼馴染の君の心配も当然だよね。相手がお兄ちゃんなんて」
平安時代の登場人物かのようなネーミングで仁のことを出して、美玖はしたり顔で頷く。
「いや、そう言うな美玖。俊と小春が付き合い始めてから使用は不本意ながらもお前の献身的な愛は評価していたぞ。しかし、一方的な愛でお前は壊したな。話を聞いた時は、さすがは俊、野獣的だと思ったぞ」
「最低最悪。無理やりでしょ?小春ちゃんが妊娠して結婚とか狙っていたなら考え方が下種。警察に突き出されなかったのが不思議。
「……………………」
「私もひたすら師匠に謝ることしかできなかった」