華麗なる人生に暗雲はつきもの
「勢いで来ちゃったけど榊田君のことが本当に大好きでね、榊田君に嫌な思いはさせないように気を付けます。だから私と結婚してくれますか?」
真剣な眼差しにそっと頬に手を添えて顔を近づけると水野は目を閉じた。
でも、その瞬間に。
これでは何も変わっていないと思った。
気付いた。
水野に好きと言われるとキスで応えていた。
言葉で示すことなんて付き合ってから一度もなかった。
そんなの面倒くさいし、キスのほうが良いと思っていたけど言葉が必要な時だってある。
「………榊田君?」
小首を傾げる水野の手をそっと取る。
「…………好きだ」
何も代えがたく、絶対に失えない、どんなことをしてでも手に入れたい。
憎らしいほど好きだ。
苦しいほどに。
緊張でか、言葉がかすれ不明慮に聞こえた。
水野がすっと息を呑む音が聞こえる。
次の瞬間、握っていた手を振り払らわれ、逆に俺の腕取る。
あまりに必死の形相で面喰いながら、水野を見る。