華麗なる人生に暗雲はつきもの
結婚指輪を二人で選べば、こんな婚約指輪も悪くない。
引き出しを開けて指輪を取り出す。
袋には佳苗がどんなに拭いても泥が落ちず、汚れたまま。
ここまでたどり着く過程の苦労が如実に表われていて苦笑が込み上げ。
水野の左手を取って顔を見ると、頬を紅潮させた水野姿。
俺は箱を開けて指輪を持ったところで……指輪を箱に戻した。
「えっ!?どうして!?」
水野は目を見開き、俺へ詰め寄るからそれを制する。
「今度は断るなよ、絶対に。ちゃんと店を予約してセッティングするから覚悟しとけ」
そうだ、思い出作りは大事だ。
これまで皆無だったのだから、せめてプロポーズくらいは。
夜景が見渡せると良いな。
海だろうかビルの眩い光のほうが良いだろうか。
この際、どちらとも見えれば良いだろう。
高級で雰囲気のあるレストランでプロポーズに限る。
こんなオンボロで洗濯物が山積みな部屋でなんて、あってはならない。
「私は別に。榊田君と結婚できるだけで十分……」
「俺が良くない!!良い場所を選んで一生の思い出にするべきなんだ!返事は、『はい』しか認めない。笑顔の柔軟体操でもしておけ」
「……榊田君って意外とロマチストだよね」
その通りだ。
こんなムードもなし、なんて信じられん。
俺はロマンチストさ。
今日からな!
笑っている水野を小突く。
俺はさっそく、レストランをリサーチ。