華麗なる人生に暗雲はつきもの
とにかく、夕食の片づけが終わり、水野が風呂から上がるのを仕事をしながら待つ。
邪な気持ちで、まだかまだかと待つ俺は、まだ若いといつものことながら思う。
実際、まだ24歳だし。
そして、俺の元に来た水野を思いっきり抱きしめると、長く艶やかな髪から変わらぬシトラスの香り。
水野専用のシャンプーは風呂場に常備。
自分のは安物で良いが、水野にはこの香りを纏っていて欲しいから切らさないように心がけていたりする。
そんな香りを身に纏う水野を押し倒して、今日もマイナスイオンに満たされるのだ。
水野ののん気な寝顔を眺めることから土曜の朝は始まる。
朝食の支度は俺の役目。
これぞ日本人の朝食と言われるものを用意して、水野を起こすのも俺の役目。
乱れた髪を耳にかけてやりながら起こす。
「おい。飯の支度できたから起きろ」
何度か揺り動かすと、目をこすりながら起き上がり。
俺の首に白い腕がするりと巻きつく。
「おはよう」
しなやかで柔らかい身体を押し付けられ、耳元で囁かれるたび、自分が溺れきっていると感じる。
誰に言われなくても、自分で一番苦しいほどにわかっている。
例えば、こいつが悪女で男を誑かして貢がせるような女だったら俺は盗みを働いてでも貢いで、こいつを繋ぎとめているだろう。
もしも、水野に何人もの男がいて俺が間男だったりしても俺はそれでも構わないと付き合い続け、本命にしてくれと頭を下げるのだろう。