華麗なる人生に暗雲はつきもの




「いや、終わった。お前が絶妙なタイミングで声かけるから驚いただけだ」



「前にも言ったでしょ?榊田君のこと見てるからだよ」



「……ふーん」



 何とも言えない気恥ずかしさを隠すように、水野を押し倒すような形で床へと寝転がる。


 ころころとじゃれ合いながらキスを交わす。


 至るとことにキスを落とす俺を水野は愛犬か何かと勘違いしているかのように頭を撫でながら、くすぐったいと笑うのだ。


 ここまで慣れるのに初心な水野は時間がかかったが、もう付き合って四年目。


 付き合い始めの水野からじゃ想像もできない。



「どこか行きたいところはあるか?」



 一応、聞くのは形式的に。


 この返答に返って来るのは、仁の家かスーパーのみ。


 仁の家は先週行ったからないし、スーパーは夕方で良し。


 わかりきった返答だから、尋ねつつ水野の服の中にさっと手を忍ばせ、犬からオオカミになるのもいつものこと。


 今日でまた次に会えるのは金曜日の夜。


 日曜日は夜を一緒に過ごせないから、今のうちにマイナスイオンを補給と思った。


 だが、今日は違ったのだ。



「あ、あのね。都心のほうのデパート行きたいんだけど良いかな?」



 水野は顔を赤くしつつ、潤んだ瞳を俺へと向けた。


 俺はさっと忍ばせた手を引っ込め、水野を抱き起す。



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