華麗なる人生に暗雲はつきもの
「今のは危うく手を出しそうになってたじゃない?紗那みたいな子がタイプなんだ?まぁ、性格も裏表がなく良い子だしね」
「……うっさい」
「彼女にプロポーズの段階での浮気はやめておけ」
高杉さんの腕が肩から離れ小突かれる。
「そうよ。浮気を覚悟してても、この段階でやるのは彼女に結婚を申し込む資格はないわよ」
「………んな…」
「ん?どうした榊田?」
「何よ。しっかり聞こえるように言いなさいよ」
「ふざけんな、って言ったんだよ!俺がいつ浮気した!?俺が水野以外の女を見たことがあったかよ!?」
二人の発言に自分でもおかしいほどの怒りが押し寄せて気付けば怒鳴っていた。
俺は水野だけしか見ていないのに、どうして何もかもが上手くいかないんだ。
他の全てが上手くいかなくても、水野とだけ上手くいっていればそれで良いのに。
一体俺は何をやっているんだろうか?
髪を搔き上げて深呼吸をする。
今ここで、自棄になるな。
水野は迷ってるだけだ。
そうだ、付き合う時だって色々考えすぎて俺を振ろうとしていたではないか。
今回だって、時間が経てば。
「さ、榊田。す、すまなかった。からかいすぎたようで……ははっ……」
高杉さんが、唖然とした表情のまま俺を見つめる。
「いいえ、こちらこそすみませんでした。お先に失礼します」
と、今度こそすり抜けて行こうとするが、今度は宮野の腕をがっちり掴まれる。