華麗なる人生に暗雲はつきもの




「服、仁のがあるから着て。それから、病院に行こう」



「必要ない。こんなやつ、ほっとけよ」



「仁!!仁でしょ!?俊君、こんな風にしたのはっ!殺しちゃう気だったの!?」



 怒りを爆発させる佳苗に、仁は素知らぬ顔。


 俺はただ膝で拳を握りしめていた。



「まぁ、アバラを折って、しばらく小春に近づけないようにするはずではあった」



「仁っ!!馬鹿!!病院連れて行かないと!馬鹿!早く動けっ!」



「おいっ!叩くな!痛い。折れてない。まともに歩けてるのが証拠だ」



「どこがまともに歩けてるのよっ!」



「折るつもりで蹴飛ばしたのに、こいつは軌道を逸らしたから折れてない。まったく、どこまでもクソガキだ」



「仁の馬鹿!もう、知らないっ。俊君、タクシー呼ぶから待ってて!」



「……必要ない。大丈夫だから。佳苗、酒くれないか?」



「クソガキが。まぁ、いい。俺にも」













 佳苗は、オロオロしながらも酒を持ってきて、俺のコップへと注ぐ。



「佳苗?俺には?」



「仁のことなんか知りません。最低!何があったか知らないけどここまでする!?血だらけじゃない!!」



「瞼が切れると派手に血が出るんだ。大したことない。それに、生きてるだけありがたく思って欲しいところだ。なぁ?榊田。自分がやったことを考えればそうだよな?」



 鋭く尖った口調には怒りが込められていて、拳が震える。


 こいつのせいで、何もかもが。


 水野を夢中にさせるこいつがいるから。
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