華麗なる人生に暗雲はつきもの




「な、何?小春さんと何かあったの?」



「こいつは、小春に振られて、その腹いせに、小春を襲おうとしたんだ」



 佳苗が俺を凝視ているのが分かった、俺は俯き自分の震える拳を見つめるだけ。



「泣き叫ぶ小春を無理やりな。なにか?お前、孕ませて無理やり結婚させるつもりだったのか?」



 俺は何も言えない、言い返すことなどできない。


 仁が心底憎い。


 殺してもなお、八つ裂きにしてもなお、憎い。


 水野が憎い。


 こんなに思っているのに、大事にしているのに、俺を見てくれない水野が憎い。


 俺はプライドが高いと知ったのはいつのことだったか。


 負けることも、コケにされることも我慢ならない。


 小さい頃から何でもできて、勉強でも運動でも喧嘩でも、全てにおいて他人より勝っていた。


 それが当たり前で、別に優越感に浸ったこともない。


 もちろん、劣等感に苛まされたこともない。


 水野と出会い、好きになり、仁と出会い、それから俺は大きく変わった。


 思い通りにならないことも惨めな経験もたくさんしてきた、そのたびにプライドを打ち砕かれるような思いを味わってきた。


 仁のような存在に出会い、絶対に負けたくないと思うようになった。




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