一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
萌音は軽口をかわす両親を見て微笑みを隠せずにいた。

萌音の双子の妊娠を通して、すれ違っていた長嶺家の時間が戻ってきたような気がした。

心が離れてしまった両親が、再び夫婦として過ごすことはないだろう。

だが、萌音の両親として、今でもこうして何らかの縁は繋がっている。

友人のように語らう男女を見て、萌音は胸が熱くなるのを感じていた。

そんな中、場の喧騒を破ったのは桜だった。

「私達もお知らせがあります。実は妊娠3ヶ月だって言われたの。順調にいけば双子と同級生よ」

一瞬の沈黙の後に、喜びが溢れる。

「それは本当なの?桜。佐和山家にとって二重のおめでたじゃない」

千香子の声に、萌音の心には喜びと共に躊躇いが浮かんだ。

桜が出産したら、この家に里帰りするはずだ。

自分と双子まで居候しては、佐和山夫妻に迷惑がかかるのではないかと咄嗟に考えたからである。

そんな萌音の気持ちを見透かしたのか、桜が笑顔で萌音に向かって言った。

「大丈夫、萌音ちゃん。私は出産後は道端の家にお世話になる予定なの。洋輔は一人っ子だったし、子供がたくさん欲しかったお義母さんも孫のお世話をするのを楽しみにしているの。ここにはお部屋もたくさんあるし、時々は帰ってくるかも知れないけど、私の子は今のところ一人だから夫婦でも頑張るつもり」

と桜は笑って言った。

優しい義姉と義兄。

結婚を通じて得た大家族に、萌音は涙が出そうになった。
< 48 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop