一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「ほほう、君は気づいていなかったようだが、私はここに流川さんが入ってきたときからずっと君たちのやり取りを聞いていたんだよ。不快でならない」

「そうでしたか。それなら話が早いですわ。さあ、流川さん、早く出ていって下さらないかしら?」

萌音を馬鹿にしたような顔で睨み付けた鈴原が、海音から引き離そうと近づいたその時、

「君は何か勘違いしているようだ。鈴原さん。君こそ退場してもらうよ?」

と、水戸黄門の印籠よろしく、最終勧告を出したのはやはり佐和山風太郎だった。

「もちろん、私達はこれから仕事がありますからもうすぐ出かけます。ですが、流川さんとこれ以上無駄な時間を過ごすのは会社にとっては損失になります。事実、流川さんは仕事の邪魔をしているわけですし・・・」

「あくまでも、流川さんが邪魔・・・だと言うんだね?」

恵比寿顔の風太郎のはずなのに、一緒に暮らしている萌音には怒ったレッサーパンダのように見える。

威嚇しても怖くないのに、歯をむき出しにして口角をあげている・・・ように見えるのだ。

そんな見分けがつくようになったのも、家族ならではの変化なのだろう。

「僕はねぇ、とても家族を大切にするんだ。千香子ちゃんのお願いだったからしょうがなくアシスタントを雇うことにしたけど、使えないし目に余る。いい加減我慢の限界だったんだよね」

「まあ!流川さんってそこまで仕事ができなかったんですね。それならこれを機会に辞めて頂くのも手ですわね」

ニコニコ顔の鈴原が黒い。

ここまでポジティブシンキングができる鈴原を見習うべきかと、萌音は少し興味を覚えてきた。

矢面に立たされているのは自分ではなく、萌音だと信じて疑わない。

その根性と自己肯定には恐れ入る。

固唾を呑んでいるスタッフには申し訳ないが、萌音はもう少し、この面白い余興をゲストとして遠巻きに見ていたい、とワクワクしていた。
< 54 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop