一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「萌音、大丈夫か?」

髪を乱し、額に汗を滲ませた海音が分娩室に入ってきた。

「佐和山さん、奥さんは5日後に帝王切開分娩の予定でしたが、先ほど急に陣痛が来て、子宮口も全開大しています。このまま自然分娩になると思って下さい」

海音は突然のことに、動揺を隠せていないようだが、驚くことに萌音よりも冷静なようだった。

「分娩に付き添ってもいいですか?彼女と一緒に出産を乗りきりたい」

「ええ、構いませんよ。ですが、二人目の出産が遅れそうなら帝王切開にすぐに切り替えます。その時には付き添えませんがよろしいですね?」

医師の言葉に、海音は力強く頷いた。

「海音、ごめんね。本当は昨日の夜から少しお腹が痛かったんだ。だけど、桜さんを心配させたくなくて黙っていたらこんなことに・・・」

「違うよ。双子が俺に萌音の出産に付き添えるようにしてくれたんだ。こいつらは親孝行だからな。ちゃんと父ちゃんも現実を見ろ、ってことだろ?」

周期的にやってくる陣痛は段々強くなってくる。

萌音はイキみを逃がしながら、優しく腰をさすり、冗談を言って励ましてくれる海音に安心感を覚えていた。
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