一級建築士の甘い囁き~ツインソウルはお前だけ~妊娠・出産編
「ほら、もう少し。そう上手、上手。ほら、頭と肩が出てきた。・・・さあ、おいで」

森久保の声かけのあと、さっきと同じように、ズルリと股の間を何かの塊が抜け出る感じがした。

しかし先ほどとは違い、赤ちゃんの泣き声が聞こえない。

「先生?どうして、泣かないんですか?」

ホッとしたのも束の間、萌音は気力で頭を持ち上げて足元にいる森久保医師を見た。

海音も立ち上がって森久保医師と赤ちゃんを見ている。

真剣な顔をした森久保医師が、赤ちゃんの背中を何回か擦った。

足の裏も同じように優しく擦る。

なかなか泣かない。

゛もしかして・・・゛

最悪のシナリオが萌音の頭をよぎる。

助産師が、口の中の液体を吸おうとチューブを持ち上げたときだった。

「ホギャー、ホギャー」

と弱々しくではあるが、泣いてくれた。

顔色が悪く見えたのはほんの数秒だったのだろうが、萌音には数十分に思えた。

「おめでとう。元気な男の子ですよ」

さっきはガッツで、今度はデガワ。

大きさも結構違う。

萌音は、泣きながら微笑みを浮かべると、安心して眠りの世界に引き込まれていった。
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