彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



「今日、宿題以外持ってくるものもないから、荷物は置いて帰ったってー!」

「そうそう、手ぶらで帰ったんだってね~?教室の鍵はどうしたんだろう~?」

「学級委員長が持ち歩いてるんじゃなーい?それも知らないで、教室の前で待ってるとか馬鹿だよねー?」

「始業式も締め出されて、帰りも締め出されるとか、どんだけボッチなんだろう~?ねぇねぇ、どんな気持ちー?」

「ど~んな気持ち~?キャハハ!」


甲高い笑い声を上げると、私を指さしながら走り去って行った。



「ふ・・・・・・・・・・・・・ざけんな・・・・・・・・・・・」



思わず、凛道蓮の口調になる。

幸運だったのは、その言葉遣いを誰にも聞かれなかった。

たった1人だけになった廊下で、強くこぶしを握り締める。



(・・・・・・・手ぶらで帰れってか?)



手の込んだ嫌がらせしやって。

ガチでくだらねぇ、いじめばっかりしやがってよぉ~・・・!



(『菅原凛』だから無抵抗でシカトしてるが、そんなに『凛道蓮』でぶっ殺・・・!!?)



そこまで考えて我に返る。

深呼吸をする。



(落ち着け凛道蓮モードでボコボコにしてしまう・・・・!!)



ただでさえ、吉田さんの件で、凛道蓮のスイッチが入ったのだ。

学校でキレるわけにはいかない。

こんな、場所でキレれない。

A組が誰もいないところで怒りたくない。



(同じキレるなら、A組メンバーがそろったところで全員を血祭りにあげるのが筋だろう・・・・!!)



〔★ヤキを入れたい気持ちはある★〕



こうなっては、一刻も早くこの場立ち去ろう。

そして、一刻も早く瑞希お兄ちゃんに会いに行こう。




(愛しい人に癒して頂かないと!!)




悔しい気持ちを押し殺しながら、教室を離れる。

すれ違う人達みんなが、こっちを見て笑っている気がする。



「やべ!気づくのが遅すぎだろう~?」

「ルノアさんに動画送っちゃおう~」

「リアルタイム実況やばーい♪」


笑うどころか、無断で撮影すんなや、コラ!!


(肖像権侵害で訴えられてぇーか・・・!?)


なんとか、凛道蓮を抑えながら、下駄箱までたどり着く。


< 79 / 922 >

この作品をシェア

pagetop