夏樹と空の恋物語
「副社長と2人きりで、エレベーターに乗ってはいけないと。それは、誰か決めたのですか? 」
「はぁ? 」
「何故、副社長と2人きりでエレベーターに乗ってはいけないのですか? 偶然、2人きりになってしまう事もあるじゃないですか? 」
「偶然? 貴女と副社長が2人で、エントラスから入ってきたのを見たわ。偶然じゃないでしょう? 」
そんなところから見ていたなんて…。
空はちょっと呆れてしまった。
「確かに、私は今日は副社長と一緒に来ました」
ピクっと、崎山の顔が引きつった。
後ろにいた女子社員も小声でざわついた。
「何を考えているの? 貴女。誰の許可をもらって、副社長と一緒に来たっていうの? 」
「それは、崎山さんにお話しすることはない事だと思います」
「呆れるわね。暗い顔して、副社長をたぶらかしたわけ? 」
またそれか…。
そらは呆れたようにため息をついた。
「あの…私が暗いからって、副社長を好きになってはいけないのですか? 」
「はぁ? 何言っているの? 貴女みたいな暗い人が、副社長の傍にいたら。副社長の価値が下がるでしょう? その位い分からないの? 」
「人の価値はそのくらいでは決まらないと思います」
「それじゃ、貴女は私より価値が上って言いたいわけ? 」
「私は価値の問題は言っていません。ただ…私は、副社長の事が好きです! 」
真っすぐな眼差しで崎山を見る空。
その目に、崎山はちょっとひ怯んだ顔をした。
「私の好きな気持ちは自由だと思います。なので、崎山さん。貴女が副社長を好きなら。私に、何かを言うのではなく。崎山さんも、正直な気持ちでいればいいと思います」
それだけ言うと、空はそのまま去って行った。