氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 当麻氷河の手首をつかみ、グイっと引く。

「おい」
「行こ。あんなの相手にしてたら授業に遅れるし」
「俺、あっち」
「は?」
「男子はテニスコート集合」
「……え」

 ーー――!!

「ごめっ……」

 パッと手を離した衝動で、うしろに倒れていく。

 ヤバい。

 このままじゃ、頭、打つーー……

「って。あれ。倒れて……ない?」

 そうか。
 尻餅をつく前に、支えてくれたんだ。

「どんくさ」
「う、うるさい」

 ありがとうって

 ――お礼言おうと思ったけど、やめた。

「メシ。食ってんの」
「え?」
「軽すぎ」

 そう言われて腰に手をまわされていることに気づく。

「……っ、いつまで触ってるの!」

 アイツから離れると、走ってグラウンドに向かった。
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