氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。
 油断させておくってことは、こちらには強みがあって、それをあの下っ端連中は知らないってこと。

「この強化合宿での成果は。最終日に存分に確認さていただくとしましょう」

 そういうと、フジオはリンクサイドから消えた。

「どこ行ったんですかね」

 トイレかな。

「戻ったんでしょ。別荘」
「……あれでいいんですか、フジオ先生」

 いくら練習が夜にあるからって顧問なんだからもっと気にかけてもいいのに。

「どうせワインでも飲むんでしょ」
「え!?」
「やる気あれば心強いんだけどなー。あのひとも」
「そういえばなにかスポーツしてたって聞きました」

 知識も幾らか持っていそう。

 まったく知らないわけではなかったから。

 スケート靴をあたためて足にフィットさせること知ってたし。

「そうそう。藤くんは――……」

 話の途中で藍さんの視線がリンクに釘付けになる。

「ちょっとちょっと。いきなり始めようとしちゃってるんだけど! 予定よりはやいって!」

 藍さんがビデオをかまえる。
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