独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

「とっても楽しかったです!」

「俺も童心に返ったよ」

興奮が冷めない私の隣で、樹先生が朗らかに微笑んだ。

そのまぶしい笑顔を見たら、さらに感情が高ぶってしまった。

樹先生のことはもともと好きだったけれど、会うたびに愛しく思う気持ちが強くなるのを止められない。

このままだと心臓がもたないよ……。

鼓動が速まるなか、彼に視線を向けた。

ついさっきまでは穏やかな笑顔だったことが嘘のように、今は眉間にシワを寄せている。

たった数秒の間に、いったいなにが起きたの?

気を揉みながら樹先生の顔を見つめた。

「雨が降りそうだな」

「えっ?」

視線の先を追って空を見上げると、どんよりとした灰色の雲が立ち込めていた。

樹先生のことばかり考えていたせいで、天気が崩れていたことにちっとも気づかなかった。

空模様を気にかけていると、鼻先に雨粒がポツンとあたった。

この後は中華街に移動して、夕食をとる予定になっている。

折り畳みの傘は持っていないけど、これくらいの雨なら問題ないよね……。

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