独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

『隙』とか『自覚がない』とか言われても、なんのことだかさっぱりわからない。けれど、昨日に引き続き、機嫌が悪いということだけはすぐにわかった。

きっとタクシーに乗るとすぐに眠ってしまった私に、あきれているんだ……。

眉間にシワを寄せて、不機嫌オーラを醸し出されるのはつらくて、胸がチクリと痛んだ。

お礼は伝えたし、もう帰ろう……。

そう思っていると、樹先生が体の前で両腕を組んだ。

「来週の金曜日の夜は空いてる?」

「えっ? あ、はい」

すでに社会人として働いている学生時代の友人とは頻繁に会う機会などないし、デートする相手もいない。

スケジュールを確認しなくても、来週の金曜日の予定はなにもないと瞬時にわかるのが(わび)しい。

「だったら一緒に食事に行こう」

「食事?」

「ああ。俺が大人の酒の飲み方を教えてあげるよ」

口角がニヤリと上がるのが見えた。

一瞬、足もとがおぼつかなくなるほど酔ってしまった私に対する嫌味かと思った。しかし、そうではないと、すぐに気づいた。

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