独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
酔った姿を見られてしまい、顔を合わすのが気まずい。でも、お礼は直接会って伝えたい。
よし、行こう。
覚悟を決めると樹先生に会うために、徒歩三分の距離にある東京赤坂病院に向かった。
今日は土曜日。診察は午前で終わりだけど、回診などで席をはずしているかもしれない。
そっと医局の様子をうかがっていると、背後から声をかけられた。
「華ちゃん?」
この声は樹先生だ!
背筋を伸ばして急いで振り返った。
昨日の学会帰りのスーツ姿も凛々してカッコよかったけれど、やっぱり清潔感あふれる白衣がよく似合う。
す、素敵……。
樹先生から視線を逸らすことができない。
照明などあたっていないのに、輝いて見える姿をボーと眺めた。
「急用?」
耳をくすぐる低音ボイスを聞き、ハッと我に返る。
「昨日は家まで送っていただいて、ありがとうございました」
ドキドキと胸が音を立てるなか、慌てて頭を下げた。
「隙だらけだったな」
「隙?」
「自覚がないから困る」
「……」
樹先生が首を左右に振って、大きなため息をついた。