独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする

そうだ。マンションの下まで迎えにいこう。

リビングを後にすると、鍵がカチャリと開く音が聞こえた。

帰ってきた!

廊下を進み、玄関に向かった。

「おかえりな……」

膝に両手をあてて荒く呼吸を繰り返す樹さんに驚き、お出迎えの言葉が途切れてしまう。

「走って帰ってきたんですか?」

「うん。……華に早く……会いたかったからね」

息も絶え絶えになるほど、急いで帰ってきてくれるなんて……。

樹さんを愛しく思う気持ちが胸いっぱいに広がった。

「ありがとう。おかえりなさい」

「ただいま」

彼の首に腕を絡ませて背伸びをすると、おかえりなさいのくちづけを交わす。けれど唇が軽く触れるだけのキスでは物足りない。

自らもう一度唇を重ねると樹さんの腕が腰に回り、ブラウスの下に手が忍び込んできた。

あ、こんなところで……。

ここは玄関ホールだし、樹さんはまだ靴を履いたままだ。

素肌の上をすべる大きな手をブラウスの上から押さえると、深く重なり合っていた唇が離れた。

「ごめん、余裕なくて……」

「い、いいえ」

冷静沈着な彼が場所も考えずに早急に求めてくるのは、たしかに“らしく”ない。でも余裕がないのは私も同じ。今すぐ樹さんを感じたいと、心と体が訴えている。

< 175 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop